ジェイムズ兄弟一味の列車強盗に参加したコヨーテは追手をまきクイントにもどってきた。クイントはBAD MAN'S TERRITORY とよばれ、悪党どもの歓楽の町であり、コヨーテはそこを根城にフリーランスで動きまわっていた。顔中ヒゲだらけ、ガニ股でひょこひょこの小男、とにかくしゃべりまくる。お気軽で人情にもろくお人好し。
無類の酒好きで、飲ませてくれる相手には、悪魔であろうと誰だろうと、一も二もなく魂をさしだし何の悔いもない。ハーモニカのごきげんな名手でもあるかれ。そして何より笑わせてくれるのが、かれの口癖「ちょびーーーーーーーっと」だ。何かというと、これである。コヨーテは小者感たっぷりの愛すべき悪党なのでした。
お調子者コヨーテの失態
まもなくして、恒例の賭け競馬開催をひかえて盛り上あがるクイントに、ジェイムズ兄弟一味も到着した。一味のなかにサム・バスというあくどい野郎がいた。かれは賭けの胴元である酒場の主人とつるんで、賭け金を丸ごと頂戴しようと企んだ。ふたりはコヨーテをおだてあげ、賭け金の保管者になってくれ、と頼み倒す。
「あんたほどの人格者、信用にたる人物はいない」と。人間の器が小さいもので、この手のことばにいい気にならない奴はいない。いい気になったコヨーテは大金を抱えさせられ、そのうえでたっぷりと酒をのまされ••••誰かに殴られ、大金は消えてしまった。絵にかいたような、人のいいお調子者がおかす失態である。
西部劇『群盗の町』の前半は、この賭け金騒動の話であり、おだてと酒に溺れるコヨーテが楽しめます。もちろんヒロインとベル・スター(有名な女盗賊)というきれいどころが一着を競い合う競馬シーンも楽しめます。賭け金騒動は町に滞在中のテキサスの保安官✳✳✳の活躍で一件落着。コヨーテ、なんとか難をのがれることができました。
お調子者コヨーテの仁義
後半は、クイント乗っ取りを図る連邦保安官ハンプトンの悪巧み、あやうくその共犯にされそうになるヒロイン、ダルトン兄弟ギャング団の銀行襲撃、といった話で盛りあがります。まあ、やはりここはコヨーテのエピソードを話さなければいけないでしょう。さて保安官✳✳✳を捕縛したいハンプトンが目をつけたのは、やはりコヨーテだ。
極上の酒で接待し、取り引きを持ちかけた「✳✳✳がジェイムズ兄弟の逃亡を助けた、と証言してくれ。悪いようにはせんぞ」。これは極楽じゃ、と頬を火照らせグイッ、グイッとあおるコヨーテ。口の軽いお調子者め、さあどんどん飲め、さあ吐け、と気をもむハンプトン。手の甲で口をぬぐいふてぶてしくかれを見返すコヨーテ(ここはどんどん飲んだ者勝ちだな••••
あんたの見込みは外れたってことさ)その瞬間、ハンプトン切れたね。コヨーテの土手っ腹に一発ぶち込んだ。愛すべきコヨーテ、口の軽いお調子者だと甘くみてはいけない、仁義にはあつい小悪党だったのです。娯楽西部劇の定石にのっとり、保安官✳✳✳はハンプトンを成敗、町の監督官となってクイントに平和と秩序をもたらすのでした。めでたし、めでたし。
大通りを、✳✳✳とヒロインが仲良くならんで馬車にのってやってきます。✳✳✳がコヨーテがのこしていったハーモニカを取り出し、口に当てます、🎵〜。ほがらかな笑い声をあげてヒロインがいいます「ちょびーーーーーーーーっと、音が外れていませんこと?」。馬車が画面左横に去ってゆき、大きくTHE END。画面が静止し、終幕。
⚫【群盗の町】1946年、モノクロ。ティム•フェーラン監督。コヨーテを演じるのは❝ギャビー❞へイス。